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製造業で図面や仕様書を生成AIに入れる前に

公開 2026-10-27

自社で描いた図面なら出すかどうかは自社で決められます。受託加工の現場にある図面は、そうではありません。所有権も秘密保持の義務も、相手方にあります。

図面は、預かりものであることが多い

製造業で生成AIを使うとき、最初に引っかかるのが図面です。

自社で描いた図面なら、出すか出さないかは自社の判断で決められます。ただ、受託加工をしている会社の手元にある図面の多くは、発注元から預かったものです。所有権も、秘密保持の義務も、相手方にあります。

自社の判断では出せません。ここが他の業種と違うところです。

⚠ 契約を読み直す

取引基本契約や個別の秘密保持契約に、「第三者に開示してはならない」という条項が入っているはずです。生成AIのサービス提供者は、この「第三者」に当たり得ます。AIという言葉が契約に書いていなくても、条項は効きます。

「AIは人じゃないから第三者じゃない」という理屈は通りません。データを預かっているのは事業者です。

現場で実際に起きていること

見聞きする範囲で多いのは、このあたりです。

場面何が出ているか
図面を撮影して「この加工は可能か」と相談 発注元の図面そのもの。品番や社名が写り込んでいることが多い
見積の根拠を整理させる 自社の原価構造。これは自社の資産だが、出したくないもの
不具合の報告書を書かせる 発注元の社名、製品名、不具合の内容
海外の取引先へのメールを翻訳させる 取引条件、単価、納期
設備の制御プログラムを直させる 自社の製造ノウハウ。流出しても気づけない類のもの

翻訳が盲点です。相手が海外だと英文メールを書く負担が大きいので、ほぼ確実に使われます。そして内容は、だいたい単価と納期です。

図面を出さずに相談する方法はある

全面禁止にすると現場が困ります。加工の相談は実際に有用だからです。

やりようはあります。図面そのものを出さずに、必要な情報だけを言葉にする。

そのまま貼る場合
(発注元の図面画像を添付)この部品、加工できますか

情報を抜き出す場合
SUS304の板材、厚さ3mm。φ8の穴を12箇所、公差±0.05。曲げ2箇所、R3。
この仕様で量産するとき、注意点はありますか

下のほうが回答の質も高くなります。図面画像を読ませるより、条件を言語化したほうがAIは答えやすい。

手間は30秒です。その30秒を惜しんで契約違反になるのは割に合いません。

✓ 判断の目安

品番、発注元の社名、図面番号、ロゴ。この4つが消えていれば、多くの場合は一般的な技術相談になります。残っていたら止める。現場で使うなら、このくらい単純な基準のほうが守られます。

取引先から聞かれる側になっている

発注元の大手が自社の生成AI利用を整備すると、次は取引先に確認が来ます。取引開始時のチェックシートや、年次の調査票に項目が増えます。

社内規程はあるか。従業員教育は実施しているか。使っているサービスは何か。

ここで「特に決めていません」と答えると、取引の条件で不利になります。詳しくはこちらの記事に書きました。

逆に言えば、先に整備しておくと差がつきます。同業他社がまだ手をつけていないうちは、わりと効きます。

まず決めるのは3つだけ

製造業で最初に決めるべきことは、そんなに多くありません。

  1. 発注元から預かった図面・仕様書は、形式を問わず入力しない
  2. 自社の原価・製造条件・制御プログラムも入力しない
  3. 相談したいときは、品番と社名を外して条件だけを書く

この3行を現場に貼っておくだけで、起きうる事故の大半は止まります。ガイドラインのひな形に足して使ってください。

完璧な規程を作るより、3行を全員が覚えているほうが強い。現場はそういうものだと思っています。

現場が覚えられる形にする

完璧な規程より、3行を全員が覚えているほうが強い。現場はそういうものだと思っています。

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