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ガイドラインひな形実務

社内の生成AI利用ガイドライン、最低限これだけ書けばいい

公開 2026-10-27

生成AIの社内ルールを作ろうとして、何ヶ月も止まっている会社をよく見ます。だいたい、最初から完成形を作ろうとして力尽きています。A4一枚で十分です。足りない部分は、運用しながら足せばいい。

禁止事項を並べたガイドラインは守られない

よくあるのが、「機密情報を入力してはならない」「個人情報を入力してはならない」と並べた一枚です。読んだ人は「わかりました」と言います。そして翌日、顧客からの問い合わせメールをそのまま貼って返信文を作ります。

本人に悪気はありません。問い合わせメールが「個人情報」だという認識がないだけです。禁止の言葉が抽象的だと、自分の目の前にあるものがそれに当たるかどうかを判断できません。

だから具体例を書きます。抽象的な原則を5個書くより、具体例を10個書いたほうが守られます。

◆ 書き方の原則

「個人情報」ではなく「お客様からのメール本文」。「機密情報」ではなく「見積書のPDF」。社員が実際に手に持っているものの名前で書いてください。

最低限入れる5項目

完成形を目指すと終わりません。この5つが入っていれば、一枚目としては足ります。

  1. 使ってよいサービスと、使ってはいけないサービス
  2. 入れてはいけないものの具体例
  3. 迷ったときに聞く相手
  4. 入れてしまったときの連絡先と、責めない旨の明記
  5. 出力をそのまま使わない、という一文

4番の「責めない」は、形式的な文書に書くのは変に見えるかもしれません。でもこれがないと報告が上がってきません。実効性で言えば、ここが一番効きます。

5番も抜けがちです。生成AIの出力には事実と違う内容が混ざります。そのまま顧客に送って、後から間違いが見つかる事故のほうが、情報漏洩より件数としては多いと思います。

そのまま使えるひな形

以下、社名と連絡先を入れ替えればそのまま配れる文面です。A4一枚に収まります。

生成AIの業務利用ルール(第1版)
〇〇株式会社 制定日:2026年〇月〇日 担当:総務部

1. 使ってよいサービス
会社が契約している〇〇のみ。個人のアカウントで業務に使うのは禁止します。無料版も含みます。
他のサービスを使いたいときは、使う前に総務部に相談してください。止めるためではなく、設定と契約を確認するためです。

2. 入力してはいけないもの
次のものは、ファイルでも、本文を貼り付ける形でも入力しないでください。

 ・お客様の氏名、住所、電話番号、メールアドレスが入ったもの
 ・お客様から届いたメールの本文
 ・見積書、注文書、契約書、請求書
 ・取引先の社名が入った資料
 ・社員の人事情報、給与、評価
 ・健康診断の結果や病気に関する情報
 ・自社の図面、ソースコード、原価がわかる資料
 ・まだ公表していない商品や企画の情報
 ・各種のID、パスワード、APIキー

3. 入力してよいもの
 ・一般に公開されている情報
 ・固有名詞を伏せた一般的な相談(「取引先」「A社」などに置き換える)
 ・自分で書いた文章の推敲、誤字チェック
 ・一般的な調べもの

4. 迷ったとき
入れていいか迷ったら、入れる前に総務部〇〇(内線〇〇)に聞いてください。
判断がつかないものは「入れない」を選んでください。急ぎでも、聞いたほうが早く済みます。

5. 入れてしまったとき
気づいた時点で、すぐ総務部〇〇(内線〇〇 / 〇〇@〇〇.co.jp)に連絡してください。
会話履歴はまだ消さないでください。画面を残したまま連絡をお願いします。
報告したことで不利益な扱いをすることはありません。早く報告してもらえるほど、できることが増えます。

6. 出力の扱い
生成AIの回答には、事実と異なる内容が混ざります。
社外に出す文章、数字、法令や規格の引用は、必ず元の資料で確認してから使ってください。
そのままコピーして送らないこと。

7. 見直し
このルールは〇ヶ月ごとに見直します。使いにくいところがあれば総務部まで。

配ったあとに必ずやること

一枚配って終わりにすると、3ヶ月で誰も覚えていません。少なくとも次の2つはセットにしてください。

まず、配布の場で具体例を声に出して読み上げること。「お客様から届いたメールの本文」のところで、だいたい何人かが固まります。心当たりがある顔をします。そこが今まさにリスクになっている箇所です。

もうひとつは、1ヶ月後に「今月、迷った場面はありましたか」と聞くこと。聞かないと上がってきません。聞くと、ルールに書いていない場面が必ず出てきます。それを第2版に足していく。

✓ 第2版で足すとよいもの

社内で実際に起きた迷いの事例。他社の一般論より、自社で先月あった話のほうが圧倒的に効きます。社名を出さない形で2〜3行書けば十分です。

規程に格上げするのは後でいい

就業規則に紐づけたり、違反時の懲戒を定めたりするのは、運用が回り始めてからで間に合います。最初から罰則を書くと、報告が止まります。

個人的には、最初の半年は「報告を集める期間」と割り切ったほうがいいと思っています。何が起きているか分からないまま厳しいルールを作っても、現場と噛み合いません。

ひな形はそのまま使ってもらって構いません。ただ、自社の言葉に直す作業だけはやってください。コピペしたまま配ると、読む側に伝わります。

ルールを配っただけでは、守られない

紙を配って終わりにすると、だいたい3ヶ月で形骸化します。判断の理由まで共有された状態にするのが、結局いちばん早い。

AI Security Lab は、生成AIを業務で使う会社向けの eラーニングです。 何を入力してはいけないか、設定で防げる範囲はどこまでか、漏れたときに最初に何をするか。 中小企業の現場で実際に起きることを前提に組んでいます。

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