先に結論
一時チャット(Temporary Chat)を使っても、入力した文章はインターネット経由でOpenAIのサーバーに送信されます。これは通常のチャットとまったく同じです。
変わるのは、送信された後の扱いだけ。画面の履歴に残らない。モデルの学習に使われない。ただし、不正利用の監視などのために一定期間はサーバーに保存されます。
よくある誤解の形
社内で聞く言い方を並べてみます。
| こう言われたら | 実際は |
|---|---|
| 「一時チャットだから外に出ません」 | 出ます。送信は止まりません |
| 「履歴に残らないから消したのと同じ」 | 画面に出ないだけ。サーバー側には残っています |
| 「一時チャットなら顧客情報も入れていい」 | いけません。判断基準は通常チャットと同じです |
| 「シークレットウィンドウみたいなもの」 | 発想は近いですが、守る対象が違います |
4番目が分かりやすいと思います。ブラウザのシークレットウィンドウは、同じ端末を使う他人から履歴を隠す機能です。訪問先のサーバーに何も送らない機能ではありません。一時チャットも同じ構造です。
一時チャットが守るのは「自分の画面を覗かれること」と「自分の入力が学習に混ざること」です。「情報が社外に出ること」は守っていません。ここを混ぜると判断を間違えます。
では、どういう場面で使うのが正しいのか
役に立たない機能というわけではありません。向いている場面があります。
まず、共有端末で使うとき。受付のPCや工場の共用端末で、次に使う人に履歴を見られたくない場合には効きます。
次に、個人的な調べものを業務アカウントでするとき。転職先の調査や健康の相談が会社の履歴に残り続けるのは、お互いに気まずい。
それから、試行錯誤の履歴を残したくないとき。同じ質問を10回言い換えて試すような使い方をすると、履歴が汚れます。
どれも「画面に残したくない」という動機です。「社外に出したくない」という動機で選ぶ機能ではありません。
保存期間について
OpenAIは、一時チャットの内容を安全性確認のために一定期間保持し、その後削除すると説明しています。公表されている期間は30日程度とされてきましたが、ここは方針が変わることがあります。
加えて、法的な要請があった場合には、通常の削除サイクルと異なる扱いになることがあります。2025年以降、訴訟に関連してデータの保持が求められた事例も報じられています。
「何日で消える」という数字を暗記しても意味がありません。方針も状況も変わります。覚えておくべきなのは、消えるまでの期間は自社で決められないという一点です。
法人プランではどうなるか
ChatGPTのBusinessやEnterpriseでは、既定で入力内容がモデルの学習に使われない扱いとされています。つまり、一時チャットを使う理由のうち「学習に使われたくない」は、法人プランでは最初から満たされています。
法人プランで一時チャットを使う意味は、「管理者や同僚に履歴を見られたくない」という社内向けの動機だけになります。
そしてここが悩ましいところで、管理者から見えなくなることは、会社にとってはマイナスでもあります。何か起きたときに追えなくなるからです。
法人として導入するなら、一時チャットの利用を推奨するかどうかは方針として決めておいたほうがいい。黙っていると、都合の悪い会話だけ一時チャットで行われる状態になります。
社内でどう説明するか
「一時チャットは使うな」と言うと、理由が分からず反発されます。説明としては次の順番が通りやすい。
- 一時チャットでも、入力した文章は社外のサーバーに届く
- 届いた後の扱いが違うだけで、届くかどうかは変わらない
- だから、入れてはいけない情報の基準は通常と同じ
- 共有端末や個人的な調べものには使ってよい
禁止ではなく、何を守る機能なのかを正確に伝える。これで誤用はかなり減ります。
入れてよい情報・いけない情報の具体的な線引きはガイドラインのひな形に、設定全般で防げる範囲についてはこちらの記事に書きました。
個人的には
この機能、名前がよくないと思っています。「一時」と言われると消えるように聞こえる。実際には「履歴に出さない」モードです。
社内説明では「履歴非表示モード」と呼び替えるくらいでちょうどいい。言葉を変えるだけで誤解がかなり減ります。